【サボテン教室】リトープス雑考④


(本記事は、旧ホームページの2005年9月23日の記事を再掲したものです。)

奈良県 岡本治男

③リトープスの斑入種
リトープスの斑入種は実に美しい…赤、橙、黄、白、などの様々な色調が表皮のみならず体内まで透き通る様にくい込んで、美しい紋様を作り出します。リトープスは〝生ける宝石゛とも呼ばれていますが、斑入り種こそ最高級の宝石と云えるでしょう。

 でも残念ながら、これらの斑は長続きせず、脱皮ごとに色調は大きく変化し、時としてはすっかり消失しまうことが多い様です。またサボテンと異なり接木繁殖が出来ないので、折角よい斑入を持っていても殖やすことが出来ません。それだけ貴重といえましょう。斑入種は実生苗から、きわめて僅かな確率で発生します。従って入手するには、自分で沢出の実生をするが、実生業者を訪れて、数多くの苗の中からルーぺ片手に宝くじを買うような気持で探しまわるしかありません。

リトープス斑① リトープス斑② リトープス斑③ リトープス斑④
濃紅リトープス斑 Lithops hookeri var. 散斑リトープス(左) 橋口氏日輪玉錦

 一般に実生苗から斑入が出るのは雑交種に多い様です。また未熟種子から出ることもあります。前記したアルビノ(白子現象)によるのかも知れません。でも、こうした苗は幼苗の時に枯れてしまうことが多い様です。斑入種どうし交配すれば、出現の確率も高いと考えられますが、親苗の入手困難な現状では中々実行不可能なようです。

④ 丈夫な品種と、弱いもの
 Aさんが作りにくいという品種が、Bさんの所では立派に育っていると言うことがよくあります。自生地が降雨量の少ない品種は、水甘のAさんにとって難物であり、逆に水辛のBさんに適しているといった、僅かな水加減が生育を大きく左右することになります。でも誰か作っても〝難物〝と云われるものも必ずあります。カクタスでいえば、高地性の‘白紅山’や‘栄冠’など、満足に作れたという話は聞いたことがありません。 ではリトープスの場合はどうでしょうか。リトープスがはじめて導入された昭和初期、栽培法の誤りから次々の球型メセンが枯れていくなかで、不思議と生き残ったのが‘曲玉’と‘紫勲’でした。従ってこの2種は特別に丈夫なものとして格付けされたものです。でも、紫勲は今でも確かに丈夫ですが曲玉は必ずしも強いとはいえません。当時の栽培法が夏型種向きだったため生き残ったのだと思います。

紫薫斑

 戦後、数多くの品種が輸入された中で‘李夫人’が非常に丈夫であることがわかり、リトープスを始めるならまず李夫人からといわれた時がありました。
また褐色系(紫勲系や露美系)が初心者向きで丈夫なことも事実ですが、緑系にも前記李夫人や‘青磁玉’‘ノーリーニアエ’など丈夫なものもありますから、必ずしも色調だけで云々することは出来ません。大型種(日輪玉系、紫勲系、露美玉系など)は種子も大きく、実生最初の一年から大きくなるので作りやすいことは事実です。反対に種子の小さいもの(神苗玉系、留蝶玉系等)は実生
1年目の生育が遅れますので、どうしても栽培が難しくなります。
具体的に栽培容易なものを、そうでないものの名を挙げてみましょう。

麗虹玉 澄青玉 留蝶玉

☆丈夫な品種
a赤褐色系(日輪玉系、紫勲系、露美玉系)
 大型に育ち、めったに枯れることはない。前記した様に種子が大粒で、実生1年でうまく育てば1.5m位 に大きくなるから初心者向きの品種といえましょう。
b青緑系(李夫人系、ノーリーニアエ 青磁玉)3種とも非常に丈夫で、余り腐敗したことはない。
cその他
 人気種の〝大津絵″〝麗虹玉″も丈夫な仲間に入れてよいでしょうか。
☆弱い品
 私の最も苦手とするのは‘留蝶玉’です。前記した様に種子が小さいので、発芽後の生長が鈍く1年目の 夏越しが大変です。その上、一般に小粒の種子は寿命が短い様で、輸入種子の場合は発芽率がよくあり ません。‘大内玉’(‘紅大内玉’も含めて)も過湿に弱い様で、夏によく腐らせます。その他小型の‘神苗玉’‘雲映玉’も順調に行けば大群生球になるのですが、実生から育てるには難しいほうでしょう。‘古典玉’‘澄青玉’(チョウセイギョク)も私の苦手とする品種です。(次回に続く)

(注・斑入り以外の3種の写真は許可を頂き、島田保彦氏著“LITHOPS”より転載致しました)