【サボテン教室】メセンの歴史を探る一冊


(本記事は、旧ホームページの2005年8月13日の記事を再掲したものです。)

戦前出版の非常に珍しいメセンの本をお目に掛けます。
作者の下郷羊雄氏はシュールのアーティストでメセンの愛好家でした。戦後も堀田千草園には時々姿を見せられた由。
解説により内容はご覧の通り、装丁も並みではありません。皆様にご覧頂きご感想を伺いたいと思います。 平尾 博

(この本は平尾博蔵書の一冊で大変貴重な資料です。昭和14年(1939年)3月に企画、昭和14年末に纏められ昭和15年3月10日に発行されました。書名は【メセム属】、著者は下郷羊雄、定価¥150、限定200部印刷された内のNo155とナンバーリングされています。本の表紙、裏表紙の両側から開いていくと、丁度、中心で2部に分かれるような構成ですので、今回はその内の半分を掲載いたします。Webシャボテン誌事務局 注)

 

解説
下郷羊雄
★表紙にはぽこんと孔があいてゐてへんなものが見えてゐる。表紙をめくるとこのへんなものはドアの把手であって、把手を成してゐるものはLithops pseudotruncatella N.E.Br.v.pseudotruncatella Dtr.和名福音玉である。
表紙の孔から見えてゐたのは成熟せる種子のサヤである。この把手は早くもこの扉が妖しき世界への通路である事を暗示してゐる。ドアを開くと遥かなる南の空から蝶の如きものが重々しい羽搏きで私の露臺へ飛んで来る。
蝶と成ってゐるものはPleiospilos Bolusii N. E.Br.和名鳳卵であって、2では長途の飛翔の疲れを休めるべく真昼の露臺に着陸する。情熱の露を肌に宿し てゐる。
3の上はLithops comptonii .Bol.和名太古玉の実生群であり、3の下(Z.S.撮影)は約一ケ年前に於けるT.S・のメセムコレクシオンの一部である、リトブスたちが多く並んでゐる。4では静かに波紋か拡がり、5のまぼろしが立ち上る。いづれもL.pseudotruncatellaの一変種で和名紫粉玉と呼ぱれてゐるものの脱皮直前の甚だしく皺の寄った状態である。
6に白い花をパツと開いたLithops erniana Tisch.和名英瑠玉のクローズアップで、メセムの花は品種によって一・定の時間に開花すると云ふ面自い性質がある。
7ではL.edithaeがずばりど胴切りされて山頂にさらされてゐる。
8はPleiospillos Nelii shwant. 和名帝玉で新葉の発育状態が明瞭にわかる。その次の頁でバルーンのやうに呑気に浮んでゐるのはDinteranthus Pole Evansii Schwant.和名南蛮玉で、バルーンの紐は賓際の根てはなくて暗室操作の産物である。 10では生長期のDint.microspermus Schwant.和名綺鳳玉が鉢植えされてゐて、その背後に色々の表情を並べてゐるのはY.S.ある。(Y.S記)★

 

5幻が立ち上がる

(例言写真をクリックすると拡大します。)