【サボテン教室】球型メセン類栽培の基本


(本記事は、旧ホームページの2003年12月22日の記事を再掲したものです。)

 

 






 奈良県 岡本治男 氏
 リトープスやコノヒーツムなど、主として南アフリカの砂漠地帯を原産とするツルナ科、メセンブリアンセマム属の多肉植物は、厳しい乾燥期に堪えるため、水分を保有する目的で葉が極端に多肉化し、球状を呈するものが多いので、俗に球型メセンと呼ばれています。これらの植物はその特異生態のため、通常の園芸植物とはやや、異った栽培上の注意が必要ですので、その要点について述べてみたいと思います。
① 培養土
基本的には通常の園芸と同様、通気性、保水性に富み、適度の肥料分を含んでおればよいので、市販のサボテン用の土で充分と思います。原産地の土壌には殆んど有機分が含まれていないから、有機質は不必要とする人もいますが、植物である限り、適度の有機質を与えるほうが、より美しく、より大きく育つと私は考えております。
因みに私の手製の培養土は次のようなものです。
赤玉土小粒5、鹿沼土小粒2、有機質1(腐葉土、バーム推肥、ビートモス等)、牛糞推肥1、川砂1、他に石灰、マグアンプK
若干② 培養鉢
市販のポリ鉢を使いますが、あまり小さいのや、洋らん用の素焼き鉢は乾き過ぎてよくありません。リトープスは3号の通常鉢に3本ぐらい、コノヒーツムは根が浅いので平鉢に寄せ植えするのが場所の節約になってよいと思いますが、これは個人の好みもあり、あまり鉢にこだわることはないと思います。③栽培環境
先ず日当りのよい場所が欲しい。これは必須条件です。出来れば終日の日照が望ましいのですが、少なくとも半日の日当りが欲しいです。日蔭や室内でメセンの栽培はできません。
次に雨に当てないこと、その為には小型のフレーム、またはビニールハウス等があれば理想的ですが、軒下や窓辺で、雨の当たらない環境があれば十分作ることが出来ます。
次に通風のよい所に置くこと。フレーム内でサボテンと同居させ、蒸し作りにすることは、徒長したり、体色を失ったり、時には腐敗の原因にもなるので、深く慎むべきです。④遮光
前記した様に球型メセンは光線を好み主生育期の秋から春までは直射光線下に置いてよいのですが、休眠期の盛夏や、初秋の強い光線は避ける必要があります。これについては後述します。
Co.flavum
 グロッチフィルム
 ブルゲリ4頭開花
⑤潅水
水やり3年という言葉がありますが、これは潅水が園芸で一番大切であり、しかも難しいということでしよう。植物の生育に応じて、その顔色を見ながら適度の潅水が出来ると人こそ、名人、上手といえるのではないでしょうか。
サボテンは砂漠植物だから水は少なくてよいという考え方は正しいと思いますが、‘少ない’というのと、‘少しずつ与える’というのは意味が違います。水をやり過ぎると腐ると聞かされ、恐るおそる少量の水を鉢の表面にのみかける人がいますが、こんなやり方をしては鉢の一
部 にしか水が通らず十分の生育が望めません。どんな鉢物でも、潅水は必ず鉢底から水が流れ出る様、十分与えることが大切です。これは水分補給の他に水の流出により鉢内に新鮮な空気を送り込むのが目的です。ちょびちょび与えるのは良くありません。十分に水をやったあと、次の潅水まで何日置くかが大切です。
 ラツム3つ子  赤石カリキュラス
 園芸書で潅水は何日目とか、週何回という言葉をよく見ますが、これはあくまでも目安であって、鉢土の乾きは、気温、天候、鉢の材質、大きさ、栽培環境(通風)、植物の生育状態(葉からの蒸散作用の差)等によって大いに差ができますから、むしろ
“乾いたら与える”、という平凡な表現のほうが正しいかと思います。一般の植物は乾いたら与えるのが常識ですが、メセン等の多肉植物は乾いてから1~2日おいてからにすべきです。初秋のまだ気温の高い時には潅水してから丸一日もたてば乾いてしまうことになります。ついかわいそうになって水をやりたくなりますが、ここが辛抱のしどころ、土が十分乾するのを待って潅水するのがメセン栽培のコツです。中には微量の水分が残っていて、この程度の乾きで根が枯れることはありません。
初秋の気温の高い時でも週2~3回、気温の低い冬季は週一回位で充分なことがあります。ここは自分の栽培条件によって判断するしかありません。でもメセンも植物の一種、生育期には水を必要とし、少しぐらいの過湿にも十分堪えられるものです。
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⑥耐寒性の問題
戸外で作るとき、冬の寒さにどの程度耐えられるかが問題ですが、メセン類は以外と寒さに強く、金の成る木(花月の仲間)や、アロエ等よりはるかに耐寒性があります。厳寒時でも潅水を減らし、乾燥気味に作れば、関東以西、太平洋ベルト地帯の平地では戸外で十分越冬します。でも高冷地で最低気温が-5℃にもなる所では、ビニールで被うか、少量であれば、夜間だけ室内に入れてやる配慮が必要です。(続く)
 平尾コノフィツム2003開花